「手打ち」と「手打ち風」の違い
「手打ち」をうたう店がふえたが、よくみると「手打ち風(式)と名乗っているうどん屋さんもある。
ちょっとした違いだが「風(式)」があるとないとでは、製造工程が異なるのだ。それは、製めん業界として公正取引規約で通達をだしているからだ。
うどんづくりの工程は、小麦粉をこねてねかせるまでと、そのあとの、のばして細く切る段階とに分けられる。 通達によると「手打ち」とは、麺棒でのばし、包丁できるのは、すべて手作業で行われるよう決められている。 ただし、その前の小麦粉をこねる作業は、機械でやってもかまわないとされている。
一方の「手打ち風」ないし「手打ち式」と言うのは、機械でこねてもいいというのは「手打ち」と同じだが、その後を通達から抜き出して記すと「麺と体の方向が交差するように緩慢な方法により圧延し、包丁または手切りに近いうす刃の切り刃によって裁断することであって、その工程の全部または一部を機械作業により行うことをいう」。
つまり、手打ちに近い機械を使っていれば、それでも「手打ち風(式)」と名乗ることができるというのである。
最初から終わりまで手作業で行ったほうが絶対おいしいという気はないが、機械を使っても『手打ち(風)」というのでは、客はだまされているような気がするが、いかがなものだろう。
そばは太らないが、うどんは太る?
「そば健康食」などという貼り紙をそば屋さんで見かけることが多くなった。その根拠は、そばにはビタミンの一種のルチンが入っていて、これが毛細血管の老化を防ぐという。ただし、ルチンは水溶性のためにゆでると溶出するので、そば湯の方に多く含まれているから、そば湯を飲まないと効果が期待できないが。
それに対して、うどんが健康にいいという人がいないばかりか、逆に「そばは太らないが、うどんは太る」と信じている人がいる。 もちろん、迷信のたぐいで、一人前のかけうどんとかけそばは、120キロカロリーで、ほとんど同じ、「うどんは太る」というのは、麺の太さからきた思い込みのようだ。
うどんのカロリーをほかの主食と比べると、「かけうどん5杯」と「ご飯3杯半」と「食パン一斤」とが、どれも600キロカロリー前後でほぼ同じだから、以外に少ないことがわかる。 もっとも、私の友人で、うどん好きの連中の中には「うどんは別腹」と言って一度に4~5人前をペロリと平らげてしまう豪の者もいる。それだけの量が食べられるには、うどんは消化がよく、すぐにこなれるためだが、これでは太って当たり前。
ということは、うどんで太るとしたら、おいしく食べ過ぎてしまうせいではないだろうか。
弘法大使のうどん伝説
中国から日本にうどんを伝えたには弘法大使だという俗説がある。というのは、弘法大使の出身は讃岐なので、「讃岐うどん」は弘法大使が中国から持ち帰って広めたという話をこの土地の人たちが語り伝えているのだ。
それに関連した伝説を、高知の民俗学者の坂本正夫さんという方が紹介している。
弘法大使が唐で、日本にはない麦を畑でみつけて、それを持ち帰ろうとした。しかし番犬がほえるので、足の裏を切ってその中に麦を3粒かくして傷口をふさいだ。
それでも犬はほえ続けるので、畑の持ち主が気付いてやってくると「お前は何かを盗んだにちがいない」と弘法大使を問いつめ、身体検査をした。
ところが何も出てこないので、今度は番犬に怒ってツエで張りとばしたら、その犬が日本の阿波まで飛んできて、その地で犬神になったなったというのである。
ところで、弘法大使が唐の長安に留学していたのは西暦804~806年のこと。 すでにこのときまでに、うどんの祖先饂飩(こんとん)や策餅(さくへい)などは、中国から伝わっていたし、麦(小麦)も日本で栽培されていた。 ということはこの話は、昔の人は有難いもの創始者は、たいてい弘法大使にしてしまう、数ある風説のひとつのようだ。
ところで、うどんで一番重要な要素とはなんでしょう。きっと多くの人はうどんのコシと答えることでしょう。コシは確かに重要です。しかし、それ以上に大切なものはうどんの味、つまり「甘み」だと思います。さぬきで専門店を食べ歩くと、コシのあるうどんはすぐに見つかります。しかし、本当に「甘み」のあるうどんにはなかなか巡りあえません。そして不思議なことに、というか当然というか、「甘み」のあるうどんとは、ガチガチのコシのあるうどんではなく、どちらかといえば適度な軟らかさとコシを兼ね備えたうどんに、よくあるような気がします。これはうどんを作る際の加水率、熟成時間に大きく影響されるからです。